リーズナブルに買える
nero Video の使い方(2019)
【例】2カメラ・1ステレオ音声での演奏会記録動画の編集
2025/05/15校正

neroはWindows95の頃、ディスク関係のツールとしてよく知られているブランドでした。いくつかのツールをセットしていて、動画ツールも入っていました。画質劣化少なくレンダリング&エンコードできる優秀なものでした。趣味的な用途では、高価な AppleのFinal Cut Proや、AdobeのPremiere などを買う必要もなく作業できるものでした。
その後、安く買える各種動画編集ソフトがいくつか出てきたせいか今はマイナーになっています。動画編集ソフトを検索してもneroはヒットしないくらいです。しかし、久しぶりに使ってみると、なかなかよいものでした。インターフェイスがあまり進化していない感があったり、機能的にやや足りないところもありますが、5,000円でちゃんとした動画編集ができてディスクまで作れるソフトはそうはありません。Movie Maker非搭載となったWindows10用の動画編集ツールとしても買いやすいです。機能的にはMovie Makerとは比べ物にならず優れています。
マイナーなソフトとなったせいか、説明サイトも殆どありません。それではと、紹介記事を書くことにしました。例として、簡単な演奏会記録をとりあげます。曲の進行に合わせて演奏者を狙うカメラを1台、場面切り替えのつなぎとしても使う全景カメラを1台、録音機1台を使い、3つのデータラインを編集でまとめていくといものです。カメラ音声は使い物になりませんが、各データの同期をとるときにカメラ音声があると同期しやすいのでカメラでも音声は記録しておきます。
I ソフト起動
1.1 起動画面
起動すると、Home画面となります。ムービー作成(拡張編集)を選びます。
1.2 拡張編集画面
いわゆるタイムライン編集画面です。この後、編集設定をして、データを読み込みます。
1.3 オプション/ムービーオプション
編集解像度を設定します。
ハイビジョン(Blu-ray)解像度は 1920*1080 HDTVフルHD
旧テレビ(DVD)解像度は 720*480 TVワイドスクリーン
II 動画編集
2.1 ファイルインポート
データファイルを読み込みます。ここでは、映像2本、音声1本です。実際はもっと多くなると思います。
2.2 データセット
ファイルを読み込むと、動画は「ビデオ」、録音は「オーディオ」に分類されます。それらを、タイムラインの編集トラックに配置します。
重なったタイムライン部分では、上のトラックが上のレイヤーとなり優先表示されます(透明設定で下のレイヤーも表示可)。
2.3 トラック追加
今回は、ビデオ2:全景映像データ、ビデオ1:フリー撮影カメラデータ、ミュージック:録音データと、配置しました。
録音など音声データは、映像なしのビデオデータとして、ビデオトラックのオーディオトラックに配置もできます。
トラックを増やす必要があるときは、右クリックメニューから追加できます。
2.4 トラック表示設定
@トラックを広く表示して詳細表示が見えるようにします。
A▼マークをクリックして詳細表示を表示します。
Bトラックの有効/無効スイッチ。時間合わせ後の音声を無効化するなどで使います。
Cトラックプロパティ表示。ビデオデータの透明度設定などを表示します。
2.5 編集インターフェイス
私がよく使う場所をマークしました。画像をクリックすると拡大表示されます。
(この状態は、時刻合わせが終わり、前・中・後ろを抜いて、頭そろえ、曲間抜き、終端そろえを始めようかというあたりです。)
2.6 トラックの時刻同期
・音声波形を見てトラックを移動し、だいたいの同期をとります。
・トラックの時間目盛を細かくしていき、精密に同期をとります。
・トラック有効/無効スイッチで切り替えつつ、最終的には耳で聞きながら、時間目盛の位置を確認しながら同期をとっていきます。この時音声スクラブ機能があると便利ですがneroはありません。
・全トラックの同期をとります。私は連続で録音した録音データにビデオデータを合わせていくことが殆どです。
2.7 プロジェクトの保存
各トラックの時刻同期作業は、けっこう大変ですから、やり直すのは疲れます。ここらで一旦プロジェクトを保存して一休みしましょう。
後は動画を見ながら、好みのカメラ映像に切り替えをしながら、1本の動画ファイルを作る楽しい作業となります。
2.8 各トラックの頭そろえ
時刻同期の終わったトラックを、切りそろえ、全体をスタート位置へ移動してそろえます。
後ろにたくさんの動画データがあるときは、全体を選択して移動します。
ずれると、ずれた動画クリップ部分の時刻同期作業が必要になります。
ずれのないところでプロジェクトを保存しておくことが大切になります。
*この例の場合、時刻同期が終わった後は、カメラ音声は使わないので、カメラ音声はソフト上でOFFにします。
2.9 音量調節
音声トラックの編集するクリップを選択しておいてプロパティを表示します。
選択したクリップの音量を設定できます。
キーフレームボタンをチェックしておくと、編集カーソル位置ごとに音量を設定でき、キーフレーム間をマウスでグラフィカルに調節できます。これにより音量のフェードイン/アウトが編集できます。
2.10 不透明度調節
映像トラックの編集するクリップを選択しておいてプロパティを表示します。
選択したクリップごとの不透明度を設定できます。
上のビデオトラックを不透明0%(透明)にすると、下のトラック(100%の場合)が現れてきます。
音量調節と同じようにキーフレームが使えます。しかし、音量のようにキーフレーム間の不透明度をマウスでグラフィカルに調節することはできないので慣れが必要です(PowerDirector、Premiereなどはできます)。
キーフレーム間の変化具合は3つあるので一つを選びます。(通常はリニア)
この機能は、演奏会記録編集にはとても大切です。使いたいカメラの不透明度を100にし、使わないカメラの不透明度を0にすることで、カメラ映像をタイムラインで選択できるからです。
暗点からのフェードインや暗点へのフェードアウトもこの機能を使います。
neroのキーフレームは映像ブロック終端にデフォルト(不透明度100%)の設定がある仕様なので、0%(透明)のまま終端まで効果が必要の場合は、終端を0%設定する必要があります。
neroの不透明度キーフレームはグラフィカルに操作するインターフェイスがないので以上の説明でもわかりにくいかもしれません。
操作中の画面をキャプチャした動画を添付しますので参考にしてください。
2.11 編集〜終端そろえ
@カット〜隙間詰め
演奏会記録では、休憩時間をカットして詰めるなどするカット作業もでます。
カット開始位置にカーソルを置きカット、カット終了位置にカーソルを置きカット、挟まれた部分をを削除、残りの後ろのクリップを詰める、という手順になります。
トラックが複数の場合、同じ位置でカットすることと、詰めるときに同期ずれしないように注意します。CTRLキーを押して選択すると、複数選択できます。
( 透明にして使っていない部分は、フェードイン/アウトで重なる時間帯をのぞいてカットしたほうがエクスポート時間が早いようです。)
A終端そろえ
編集が終了したら、終端揃え(カットなど)して、プロジェクトを保存します。プロジェクトを保存してあれば、次の動画保存やディスクオーサリングはプロジェクト読み込みからも継続できます。

ここではこの後、動画書き出しの「エクスポート」へすすみます。
すぐにディスクを作る作業にすすむ場合は、「次へ」へすすみディスクオーサリングを始めます
2.12 キャプション
曲名など映像にキャプションを入れます。映像トラックを使うので、トラックが足りない場合は追加してから作業します。
エフェクトパレットのテキスト-固定テキストを選択し、タイムラインにドラッグアンドドロップしてセットします。その後、文字編集や、位置、表示時間などを編集します。
2.13 編集によるズーム効果とパン効果
固定カメラ撮影した映像を、編集段階で、ズームしたりパンしたりする効果を作ることができます。
ズームは映像をクロップ編集することで、パンはクロップした映像の表示位置編集することで作ります。
クロップでは、撮影画像を切り抜き表示画面に合わせるので、出力画素数よりクロップ部分画素数が少ないと映像が甘くなります。
FHDカメラ(1920*1080px)で撮影したものは、SD画質(720*480px)に対して約2.5倍までズーム効果を出せますが、
カメラと同じFHD画質に対しては有効画素数がなくなるので映像が甘くなるということです。
この場合は、4Kカメラ(3840*2160px)で撮影しておけば、約2倍のズーム効果まで出力画素数をもてることになります。
(1) @編集トラックを指定-Aエフェクトパレットを開く-Bプロパティの[位置]と[拡大/縮小を開く]
デフォルトは、FHD編集で、x960,y540,100% です。
(2) ズームやパンの開始位置にキーフレームを追加(位置と拡大縮小の2つ)
小さな◇をクリック。
位置と拡大縮小2つセットで追加します。
この時点では、その時間位置の現在の値が設定されます。(編集は効果開始位置と効果決定を決めた後に)
(3) ズームやパンの決定位置にキーフレームを追加(位置と拡大率の2つ)
時間目盛が大きくて短い時間間隔のキーフレームが重なる場合は、時間尺でマウスドラッグすると目盛を変化できます(右方向ほど短時間目盛に)。
開始位置と終了位置が決まればよいので、先に効果決定位置を設定し、追ってその手前に効果開始位置を設定するという逆の設定手順でもよいです。
(4) 効果開始位置(前のほう)は編集しません。それまでの設定をその時点まで固定するためです。
(5) 効果決定位置(後のほう)で決定する値を編集設定します。
着目キーフレームが変わった場合は、タイムラインカーソルをキーフレームに移動し編集します。
(6) 効果の時間進行を変更したい場合(ゆっくり、速くなど)、キーフレーム間隔で調整します。
キーフレームはマウスドラッグで位置を変更できますが、位置と拡大率を同時に位置変更できません。
一方を変更したら組になるもう一方のキーフレームを合わせます。
III 編集動画出力
動画書き出し
「エクスポート」ボタンから、各種動画形式にエンコードし保存します。
プロジェクトを保存してあれば、Home画面からもすすめます。
FHD(1920*1080,BDなど)か、STD(720*480,DVDなど)の解像度がよく使われます。
現在よく使われるのMPEG4(AVC/H264)は、フォーマットを[AVC]を選択し、プロファイルを解像度にあわせます。(720*480/AVC,1920*1080/Youtube Best HD)
紛らわしくフォーマットメニューに[MPEG-4]がありますがこれは選択しません。こちらはQuickTimeなど古い規格のMPEG4用です。
GPUとエンコード時間
MP4エンコードではGPUがあればハードウェアエンコードを使ってエンコード時間を短縮できます。
FHD_8Mbps(Youtube Best HD)の場合
Intel Core2 Quad(Q9650) & NVIDIA GT710 の場合、動画時間×約1.1倍(CPUのみでは動画時間×約2.7倍)
Intel Core i7-3770K & NVIDIA GTX1650 の場合、動画時間×約0.5倍(CPUのみでは動画時間×約1.2倍)
のようになります。
IV ディスクメディア用オーサリング
Blu-ray/DVD再生機用のBlu-ray/DVDディスクを作る作業です。
編集画面から「次へ」ボタン、またはHome画面からメニュー選択で進みます。
Blu-ray、DVDともに同じ手順ですのでBlu-rayとしてすすめます。
4.1 チャプター設定
再生機での頭出しや、メニュー設定に必要なチャプターをつけます。
つけなくてもよいですが、頭出しや早送りがしやすいので、時間の長い動画は何分刻みなどつけるのがベターです。
演奏会記録では、曲の頭の少し前などに設定しています。だらだら長い動画は2分刻みなどです。
4.2 メインメニュー
頭出し用のメニューです。チャプターをつけてあれば、そこに自動でメニューが入ります
私は、チャプターだけつけて、メニューをつけないことも多いです。チャプターがあれば、曲の頭出しはチャプター送りでできるからです。
こちらはメインメニュー設定画面です。
4.3 チャプターメニュー
メインメニュー設定に続いてこちらはチャプターメニュー設定画面
4.4 ディスクプレビュー
ディスクデータ書き出しの前にディスクの動作をプレビューできます。
4.5 ディスクデータ書き出し
ディスクドライブを選択すれば、すぐにディスクを焼くことができます。
私の場合、ここではディスク書き出ししません。ハードディスクフォルダにデータを書き出します(Premiereはこれができません)。
その後、ディスクにフォルダデータを必要枚数コピーします。そうしないとディスクコピー毎にレンダリング&オーサリング時間が必要になるからです。
Windows10にMovie Makerが添付されなくなったので、よいツールがないかと探していました。
サポート終了前にダウンロードしたWindows Essentials 2012(Movie Maker)などがあればWindows10にもインストールできますが手軽ではありません。
また、動画編集ソフトとしてみれば、機能がシンプルすぎます。
フリーソフトでは、ShotCutがありますが、操作性の敷居がやや高くPC操作に慣れた人向きです。
それでもWindows10に無料で動画編集機能を備えておきたいとなればShotCutがよいでしょう。
市販ソフトの無料版は、期間限定や機能制限があり、継続的に使ったり腰を据えて使えるものではありません。
neroもお試し版は機能制限がありましたが、製品版が4500〜5000円で手軽な価格だったので、ダメモトでもよいかと買って試してみました。
1万5千円くらいの予算があれば、
CyberLink PowerDirector がおすすめです。カメラ切り替えキーフレームのGUI機能、時刻合わせに必要な音声スクラブ機能、高速エンコードなど。2025年現在、サブスクタイプのソフトが増える中、買い切りできるソフトでもあります。
フリーソフトの
ShotCutは、操作性の敷居はやや高いですが、
音声スクラブ、GUIによる不透明度設定などの機能はneroにない編集機能で、操作に慣れていけばお勧めできます。
オーサリング機能はないのでディスクまで出力したい場合は、リーズナブルなneroといっしょに使うのもよいでしょう。
この記事を書いた2018年頃から2025年現在にかけて、リーズブルな動画編集ソフトとして、
Filmoraが人気です。
私も買ってみました。使いやすく機能豊富で人気の理由がわかります。ただ複数カメラや2時間程度の演奏会動画編集に使うと、時刻同期をとっても音ずれがでたり、
編集場面では音ずれなくとも動画変換後の動画に音ずれを発見したりすることがありました。
地味な部分ですが、こうした安定性は、演奏会記録動画編集では重要で、Filmoraいま一つ信頼できない印象をもってしまい演奏会動画編集では使わなくなりました。
リーズナブルなソフトとして、インターフェイスや機能はFilmoraに負けますが安定性はneroかなと感じています。
