ピクセルサイズの限界を考察


デジカメの宣伝では画素数の多さを謳うことが多いですが。同じ大きさのセンサーで画素数を多くすると、1画素の大きさ大きさは逆に小さくなります。

画素一辺長さ ≒ センサー一辺長さ ÷ センサー一列の画素数

画素一辺の長さはピクセルピッチとよばれています。面積も含めた一画素の大きさのイメージはピクセルサイズとか画素サイズとよばれています。
1画素の大きさが小さくなると、画素に光を集めにくくなります。画素に光が集めにくくなると、正しい光データが記録されにくくなります。 正しい光データが記録されないと、グラデーション(階調性)や明暗深度(ダイナミックレンジ)がおおざっぱになり、写真の質感がうすれます。 (水の表面など、つやつやしたものの表面の描写でよくわかります) また、ピクセル等倍にしたときの被写体の輪郭もぼやけてきます。(細いものの輪郭でよくわかります) --> カメラメーカーの説明もどうぞ
画素数を増やすことの弊害もあるのですが、最近のデジカメは画素数を増やす一方です。 結果としてピクセルサイズも小さくなる一方です。それで、拡大はきくけれども、質感が落ちる写真データも目にするようになりました。 小さいセンサーのコンデジやスマホカメラならともかく、フルサイズ/ハーフサイズ(DX,APSC)カメラでそれは困ります。記録を拡大したら文字が識別できるとか、誰が写っているかわかるというのは画素数による部分です。同じに写っているものの輪郭が美しいとか、質感が本物らしいというのはピクセルサイズによる部分です。
フルサイズ/ハーフサイズ(DX,APSC)写真の楽しみは、食べ物でいえば「味」の部分です。食料としては食べられるものならば何でも大切なものです。味なんていっていられないこともあります。大センサーカメラを使って写真を楽しむのは、画素数でなくピクセルサイズによる「味」、質感、を楽しみたいという部分が大きいと思うのです。画素数が必要以上いらないというのは、ごちそういっぱい出されても食べられなくて余すことになるというのにも似ています。 そこでこんな考察を始めました。下の2枚の画像を見てください。

7.9μ
2005年 Nikon D50 (6MP)

20mm(30mm相当) f=5.6 ISO=200
(画像クリックでピクセル等倍表示)

1.9μ
2015年 iPhone6plus (8MP)

4.15mm(29mm相当) f=2.2 ISO=32
(画像クリックでピクセル等倍表示)

ガラス部分の切り出し比較
左は、2005年の デジタル一眼レフ Nikon D50(7.9μ) の画像。右は、2015年の iPhone 6 plus(1.9μ) の画像です。 縮小サイズでは差はわからないです。画像をクリックしてピクセル等倍データとして見てください。違いがわかると思います
iPhone6plusは、ちょっとしたコンデジよりよい画像データを出します。2015年時期のコンデジやスマホカメラより画素数をおさえピクセルサイズを若干大きくしています。レンズは単焦点を採用しています。それらと、優れた画像処理エンジンを組み合わせたことによる結果と考えます。
Nikon D50(600万画素) の画素数は、iPhone6(800万画素) 以下です。しかし、画像データの質は上の比較のように上質です。ガラスの光沢感や、屋根亜タンの質感、その他を比較してください。D50のほうがあきらかに質感がよくでています。
1画素の光の捕らえ方でこの違いがでるようです。輪郭強調や色彩強調などのように画像処理エンジンで補正しきれない部分です。
iPhone6plus を見下しているのではありません。今回の観点から小ピクセルの例として使ったものです。携帯便利、並のコンデジよりきれいな写真、動画、多機能、本当に優れた携帯デバイスです。これ一台でこと足りることは多いです。逆に、カメラとしては、コンデジといえども、iPhone6plus 以上の写りでなければ、カメラとしての存在価値はないというものです。
では、どの辺までならどんな画質になるのかという考察を、私の手持ちデータや、ネットの実写データを見ることからしていきます。


8.5μ
2008年 Nikon D700 (12MP)

50mm f=5.6 ISO=200
(画像クリックでピクセル等倍表示)
7.9μ
2005年 Nikon D50 (6MP)

35mm(52mm相当) f=5.6 ISO=200
(画像クリックでピクセル等倍表示)

ハーフサイズD50のセンサー面積を2倍にした感じのD700の画像です。センサーがCCDからCMOSになったり、センサーサイズの関係でピクセルピッチも若干大きくなっています。画素数が増えて拡大がきくようになりますが、センサー面積を広げることで増やしていて画素は小さくしていないので、D50同様、ピクセル等倍画像はくっきりして何の問題もありません。
D50は600万画素で四つ切300dpi出力に必要な870万画素(業務用印刷機の解像度350dpiでは1015万画素)に足りていませんが、1200万画素確保しているD700は十分です。150dpiなら全紙出力もカバーします。150dpi全紙出力に必要な画素数は900万画素です。35mmフィルムの全紙プリントはフィルム粒子が見えてきますから150dpiもない印象をもっています。大伸ばし写真は離れて見られて新聞のような見られ方はされませんから十分なのです。デジタルカメラの画素数は、35mmフィルム一眼レフのクオリティを必要十分とすれば、1000万画素前後あれば十分と計算できます

5.5μ
2008年 Nikon D90 (12MP)

35mm(52mm相当) f=5.6 ISO=200
(画像クリックでピクセル等倍表示)
8.5μ
2008年 Nikon D700 (12MP)

50mm f=5.6 ISO=200
(画像クリックでピクセル等倍表示)

左はピクセルピッチを5.5μとし、ハーフサイズ(DX,APSC)で、1200万画素確保した Nikon D90 の画像です。右のD700の1200万画素データと比べると、若干、輪郭があまいかとも見えますが、画角をそろえたことでレンズ焦点距離が違っていますから、レンズ描写の違いによる誤差範囲かもしれません。十分しっかりとした像を結んでいると思います。

6.0μ
2012年 Nikon D600 (24MP)

50mm f=5.6 ISO=100
(画像クリックでピクセル等倍表示)
5.5μ
2008年 Nikon D90 (12MP)

35mm(52mm相当) f=5.6 ISO=200
(画像クリックでピクセル等倍表示)

左は、D90とほぼ同じピクセルピッチでフルサイズとした Nikon D600 の画像です。フルサイズなので画素数は約2倍の2400万画素となっています。センサーサイズの関係でピクセルピッチは、6.0μと若干大きくなっています。ピクセル等倍データはD90同様くっきりしたままで、画素数が増え拡大がきくようになります。こうなると35mmフィルム以上のクオリティです。D600が登場しその画像データを見たとき、解像感を保ったまま拡大のきくフルサイズカメラの迫力に圧倒されました。これは欲しいと思ったものです。プリント写真と違い、デジカメ写真は、ディスプレーですぐに拡大して鑑賞できますので、高画素写真も気楽に楽しめるようになりました。そのかわり、ちょっとのカメラ振れ(遠景振れ)が気になってもきます(拡大鑑賞できるということは常に望遠レンズで撮影しているのと同じことになりますから)。
フルサイズ2400万画素は十分な画質で、フルサイズならではの画素数と考えます。

4.9μ
2014年 Nikon D810 (36MP)

(画像クリックでピクセル等倍表示)
SIGMA 8-16DCH 16mm f=8 ISO=64
PHOTOHITO画像
4.9μ
2014年 Nikon D5100(D7000) (16MP)

(画像クリックでピクセル等倍表示)
29mm(43mm相当) f=5.6 ISO=100
PHOTOHITO画像

左は、ピクセルピッチを4.9μまで小さくし、3600万画素を確保したフルサイズ Nikon D810 の画像です。D810を実写したことはないのでPHOTOHITO画像です。SIGMAのレンズがよく解像しています。水面のざらつき感がを感じるするところがそろそろカメラのほうのセンサー限界かなという気がします。
3600万画素は、全紙やA2を300dpi出力するために必要な画素数です(350dpiなら4200万画素)。高価なPhaseOneなどの中型デジタルフィルムパックでする高解像ポスターなどの仕事を、リーズナブルな35mmフィルムサイズカメラでまかなおうという製品意図もあるとも察します。
D5100やD7000 も実写データがないので(友人がD7000をもっているのですが)、PHOTOHITO画像より拝借。いい写りですがピクセル等倍は輪郭があまくなってきたり、質感うすれてきたりで、ぼちぼち限界きそうな予感。 しかし、次に紹介する、3.9μの D7200 よりは上質と思います。
質感重視でいくならピクセルピッチ5μ周辺が実用限界という印象です。フルサイズでは3600万画素、ハーフサイズ(DX)では1600万画素となります。

3.9μ
2014年 Nikon D3300/7200/5300 (24MP)

(画像クリックでピクセル等倍表示)
30mm(45mm相当) f=11 ISO=400
メーカーサンプル画像
6.0μ
2012年 Nikon D600 (24MP)

50mm f=5.6 ISO=100
(画像クリックでピクセル等倍表示)

左は、ピクセルピッチを3.9μまで小さくし、ハーフサイズ(DX,APSC)でフルサイズ並の2400万画素を確保した Nikon D3300 の画像です。実写データをもっていないので、メーカー撮影サンプルページからです。
湖面のなめらかさがいまいちです。細かい部分の描写もあやしいです。ISO400と、F11ですが、画素ピッチ大きければこれほどにはなりません。
今回の考察の結論が見えてきました。質感重視でいくならピクセルピッチ4.0μ周辺はぎりぎりです。

2.9μ
2014年 Nikon 1 v3 (14MP)

(画像クリックでピクセル等倍表示)
18mm(45mm相当) f=8 ISO=400
PHOTOHITO画像

2.7μ
2006年 FUJIFILM FinePix F30 (6MP)

12.2mm(55mm相当) f=5.6 ISO=100
(画像クリックでピクセル等倍表示)

左は、ピクセルピッチ2.9μの Nikon 1 v3 の画像です。 PHOTOHITO画像からです。
これは質感がつぶれています。1型センサーなので仕方ないですが、4μ900万画素くらいにわりきってしまえば、拡大はきかなくとも、画像はきれいになると思います。
右は、ピクセルピッチ2.7μの FinPix F30 の画像です。1/1.7型と小さいセンサーですが、画素数を600万画素と抑えピクセルサイズを大きくしています。600万画素あれば、A4印刷など、通常十分です。F30は、スキー行など、私のポケットカメラとして、2016年も現役です。

1.5μ
2012年 PENTAX Q (10MP)

(画像クリックでピクセル等倍表示)
8.5mm(47mm相当) f=5.6 ISO=125
1.9μ
2013年 PENTAX Q7 (10MP)

8.5mm(38mm相当) f=5.6 ISO=100
(画像クリックでピクセル等倍表示)
左は、ピクセルピッチ1.5μの PENTAX Q の画像です。 1/2.3型センサーのカメラの中ではよい画像なのかもしれませんが、やはり小さいセンサーを小分割した光の載り具合で質感の乏しいものです。被写体の輪郭も出ていません。
右は、ピクセルピッチ1.9μの PENTAX Q7 の画像です。PENTAX Q と画素数は同じですがセンサーを 1/1.7型としたことによりピクセルサイズがアップしています。 また裏面照射型センサーによる集光アップの効果もあるかもしれません。PENTAX Q より被写体の輪郭が出ています。質感も Q より若干アップした画像となっています。また、ほぼ同じピクセルサイズの iPhone6 より良質な画像となっていますから、レンズを含めカメラとしての存在感はあります。
裏面照射型センサーでも、カメラには 2.0μ以上のピクセルサイズは確保しないとスマホとの差別化はできないでしょう。拡大できてもきれいな拡大にならず、無駄に写真データが大きくなります。


フルサイズ、ハーフサイズ(DX,APSC)カメラなら
ピクセルサイズは4.0μ平方周辺が限界と考えます。
質感重視なら5.0μ平方以上ほしい
35mmフィルム品質なら1200万画素あればよいと考えます。
4/3型が4.3μで1200万画素となるので35mmフィルム品質を確保できる下限のセンサーサイズ

カメラは光を集めることが仕事なのでとりあえず「大きいことが吉」がもう一つの結論。
センサーサイズ、ピクセルサイズ、レンズ径 ... 結果大型カメラ、どんどん携帯不便に (^^;)
用途によって使い分けが一番でしょう
メーカーさん、フルサイズ、ハーフサイズ(DX,APSC)カメラは十分画素数もてるのでピクセルサイズ下げないでね


CAMERA