吹奏楽団が誕生した頃
since 1974
目指すはアカデミックな吹奏楽

1974年、玉川学園高等部吹奏楽団OBを中心に大学の同好会として、玉川大学吹奏楽団は誕生しました(部長/谷本先生,指導/木村先生)。
当時、玉川学園には、中学部(1963(宮下先生)〜)、高等部(1965(木村先生)〜)の吹奏楽団が存在し高等部は、全日本吹奏楽コンクール全国大会出場、中学部も都大会上位に位置するなど、素晴らしい活動をしていました。しかし、大学にはまだ吹奏楽団が存在せず、高等部吹奏楽団OBの山崎氏、石塚氏、円山氏、深沢氏等が中心となって、各方面へ情熱的に働きかけ、1974年に同好会として活動することが認めらました。
同好会顧問として谷本智希先生(2007年他界)、合奏指導として木村仁先生にお世話になります。この当時の先輩諸氏の情熱無しには、現在の大学吹奏楽団は存在していません。私たちの楽団は、学校が設置した楽団ではなく、吹奏楽を愛する学生の情熱が産んだ楽団なのです。さかのぼって高等部吹奏楽団も2人の先輩の情熱によって誕生した吹奏楽団です。
第1回定期演奏会
1976年7月2日/中原会館
指揮:木村 仁
【プログラム】
音楽祭のプレリュード(A.リード)
南極点への序曲(岩川三郎)
吹奏楽の為の寓話(兼田敏)
バートバカラックメドレー(バートバカラック)
夜のストレンジャー(B.カエンフェルト)
煙が目にしみる(J.ケルン)
ラコッツィー行進曲(ベルリオーズ)
吹奏楽のための組曲 第1番(G.ホルスト)
第2回定期演奏会
1977年7月2日/多摩市民館
指揮:田中 旭
【プログラム】
組曲第3番(R.ジェイガー)
聖火と祭り(F.マクベス)
フィーリング(M.アルベルト)
栄光への脱出(E.ゴールド)
スターダイト(H.カーマイケル)
愛のテーマ
行進曲「英雄」(C.C.サンサーンス)
マイスタージンガー前奏曲(R.ワーグナー)
1977年、現在の指揮者の田中旭先生が、玉川学園女子短期大学に着任しました。先生が、国立音楽大学でクラリネットを専攻していたことや、公立中学校、市民吹奏楽団の指導を精力的にされていることを知った先輩諸氏は、田中先生を指導者として迎えるための努力を始めました。顧問の谷本先生にも力添えをいただきました。この辺のいきさつについては、先輩の山崎・石塚氏が詳しいところです。
第3回定期演奏会
1978年7月1日/世田谷区民会館
指揮:田中旭/谷本智希(*)
【プログラム】
ファンファーレ・コラール・フーガ/C.ジョバンニーニ
吹奏楽の為のコラール/V.ネリベル
序曲インペラトリクス/A.リード(*)
スターウォーズのテーマ/J.ウィリアムズ
ラストコンサート/S.シプリアーニ
マーチ「明日に向かって」/岩井直博
ブロックM/J.H.ビリック
サムソン序曲/G.F.ヘンデル
戴冠式行進曲「王冠」/W.ウォルトン


吹奏楽団創設当時の演奏会は、吹奏楽オリジナル曲、オーケストラ・アレンジ曲、マーチ、ポップスなど、いろいろなジャンルの曲をとりあげていました。これは当時の吹奏楽演奏会に多い形のものでした。(ステージ・ドリルをとりいれる楽団もありました。) 吹奏楽曲をじっくり聞かせる演奏会はありませんでした。また、コンクールの影響か演奏される曲も小品が多く、少し大きな作品は、ほとんど紹介されることがありませんでした。そんな時代背景もあり、大学吹奏楽団としてアカデミックな演奏活動をしようと方向づけ、1979年頃より、定期演奏会では、吹奏楽の名曲を中心としたプログラムを積極的にとりあげ活動していきました。とはいえ部活バンドですので未熟な部分は多いです。当時の録音でその思いを感じていただければ幸いです。(曲名がリンクになっているものが録音データにリンクできます)
第4回定期演奏会
1979年7月8日/立川社会教育会館
指揮 田中 旭
【プログラム】
A.コープランド/戸外のための序曲
J.エドモンドソン/ページャントリー序曲
H.ハンソン/ディエス・ナタリス
F.J.ゴセック/古典序曲
H.O.リード/メキシコの祭り
'79クリスマスコンサート
1979年12月22日/多摩市民館
指揮:田中 旭
【プログラム】
C.カーター/クイーンシティ組曲
A.リード/ロシアのクリスマス音楽
R.ディレクソン/ウェルカムオールワンダーズ
A.ケテルビー/修道院の庭にて
R.R.ベネット/キャロルカンタータ/他

第4回定期演奏会「メキシコの祭り」演奏中の吹奏楽団






1979/3/23(石川県金沢市) 全日本アンサンブルコンテスト 金管八重奏 銀賞

第5回定期演奏会
1980年7月12日/町田市民ホール
指揮 田中 旭
【プログラム】
G.ホルスト/吹奏楽のための第1組曲
G.ホルスト/吹奏楽のための第2組曲
A.リード/アルメニアンダンス
玉川学園創立50周年記念吹奏楽演奏会
1980年10月25日/虎ノ門ホール
玉川学園中学部吹奏楽団 指揮/木村 仁
斉藤高順/行進曲 銀河を越えて
C.ジョバンニーニ/ファンファーレ・コラール・フーガ
J.P.スーザ/星条旗よ永遠なれ
玉川学園高等部吹奏楽団 指揮/高浪晋一
服部公一/吹奏楽のための序曲 南の島から
A.リード/アルメニアンダンス第4楽章
J.エドモンドソン/ページェントリー序曲
玉川大学吹奏楽団 指揮/田中 旭
A.リード/イン・メモリアム
A.リード/アルメニアンダンス





'80クリスマスコンサート
1980年12月22日/中原会館
指揮:田中 旭
【プログラム】
J.H.ゾーメイヤー/ア・ソング・フォー・クリスマス
A.O.デービス/エリザベス時代のキャロル
V.ネリベル/コラール
N.H.ロング/クリスマス・ラプソディー
L.アンダーソン/そりすべり/他
第6回定期演奏会
1981年10月24日/海老名市文化会館
指揮:田中 旭
【プログラム】
V.ジャンニーニ/交響曲第3番
P.グレンジャー/リンカンシャーの花束
V.パーシケッティ/交響曲第6番



第7回定期演奏会
1982年11月20日/町田市民ホール
指揮:田中 旭
【プログラム】
C.ウィリアムズ/ファンファーレとアレグロ
C.ウィリアムズ/シンフォニック・スイート
P.フォーシェ/交響曲変ロ長調
第8回定期演奏会
1983年11月19日/町田市民ホール
指揮:田中 旭, 大澤健一(*)
【プログラム】
R.R.ベネット/アメリカ古典舞踊組曲
C.T.スミス/吹奏楽の為の交響曲第1番(*)
A.リード/吹奏楽の為の第3組曲
R.R.ベネット/吹奏楽の為のシンフォニックソング





第9回定期演奏会
1984年11月17日/町田市民ホール
【プログラム】
指揮:高浪晋一
R.V.ウィリアムズ/行進曲風トッカータ
R.V.ウィリアムズ/イギリス民謡組曲
指揮:大澤健一
G.ホルスト/ムーアサイド組曲
指揮:田中 旭
D.ミヨー/フランス組曲
F.シュミット/酒守祭 作品62
第10回定期演奏会
1985年11月16日/町田市民ホール
【プログラム】
指揮:高浪晋一
C.S.カテル/序曲ハ長調
G.パレ/序曲リシルド
指揮:田中 旭
P.ヒンデミット/交響曲変ロ長調
指揮:大澤健一
R.E.ジェイガー/ダイヤモンド変奏曲
指揮:田中 旭
M.グールド/サンタフェ物語
*VHSビデオからのモノラル音声





私たちの後輩も、アカデミックな吹奏楽活動を展開しています。定期演奏会だけでなく、スプリングコンサート、オータムコンサート、クリスマスコンサートと、幅広く活動しています。また、コンクール活動にも取り組み、2005年には全国大会で金賞を受賞していますし、東京都本選には毎年すすんでいます。大学吹奏楽団として演奏会を楽しんでいただくための基礎的なスキルも十分と思いますし、頼もしく思います。
現在、玉川学園には、小学部、中学部、高等部、大学に吹奏楽団が活動しています。それぞれが仲良く連携し、全体として発展することを願ってやみません。中学部、高等部の吹奏楽団OBの中には、音楽の専門家としての道に進路をすすめ、音楽大学、音楽家として活動をしているメンバーも少なくありません。
玉川の吹奏楽仲間を集め、大人の吹奏楽活動をすることが夢でした。趣味で音楽する人は、心技体を磨いて命がけ(ライフワーク)で音楽をするし、職業で音楽する人は、仕事の緊張感から離れ楽しく音楽しようというものです。この夢は、2003年から玉川学園同窓生吹奏楽ミーティング「ドリームバンド・コンサート」として実現できました。プログラムは、大学演奏会のアカデミックなものとは趣を変え、フレンドリー、ファミリーなものです。アカデミックなものは、吹奏楽になじみのない方には楽しみにくかったり(家族や子供に受けない (^^;) )、練習時間も多く必要としますから。このミーティングは、吹奏楽仲間の同窓会になったり、熟年から若年まで一緒に活動できたりするとても幸せなミーティングとなっています。

2008年11月8日 ドリーム・バンド演奏会
大学演奏会でとりあげるような曲目は、今でもプロの演奏会でもなかなか聞くことができません。商業的に成立する曲ではないのでしょう。オートバイや、自動車で、メーカーが作らなくなったものを、マニアが大切にしてミーティングを開いて楽しむように、これらの曲を楽しむことは、ドリームバンドメンバーとともに、のんびり楽しんでいくことも夢に加えたいと思います。録音・録画のみ、聴衆も好きな人だけで練習から懇親会まで一緒に楽しむという吹奏楽ミーティングも楽しそうではありませんか。

(2008年12月北村)

辻本さんのこと

これを書く前に...COVID-13パンデミックが2020から2〜3年間続きました。また2020年にプーチンが始めたウクライナ侵略はまだ続いています。2023年はイスラエル - パレスチナの紛争が激化して続いています。こんなことになるとは想像もしませんでした...
これまでは、録音記録を個別のmp3データにしてサーバーに置いて聞けるようにしてきましが、YouTubeが便利になったのでそこへ引越しをしました。映像が無い状態でも、チャプタ機能が使えて頭出しや、途中視聴が使えて便利なことや、スマホからアクセスしやすいからです。
その作業をしていて感じることは、1970年代の録音記録が高音質で残されていることです。これは、録音をしてくださった「辻本 廉」さんの力によるものです。辻本さんは、残念ながら2017年3月に癌で72歳の若さで他界されました。辻本さんはNHKで仕事をされ音響畑一筋歩んできた方です。学生の頃、田中先生を通じて知り合い、ボランティアで楽団の演奏会を録音を引き受けてくださるようになりました。私が聞いた辻本さん録音は、私のようなアマチュアが録音した雰囲気でなく、まるでクラシック音楽レコード(それ以上)のような雰囲気でした。私は身の程もわきまえず、楽団の演奏をサンプリング音源に加えてもらうようお願いしたのです。1979年の定期演奏会から後、ここにある10回目の演奏会以外は、全部が辻本さんの録音です。10回目も辻本さんが録音していると思われますが、私のところにはビデオ映像しかありません。
録音は、機材を辻本さんが準備し、当時研究中だったデジタル録音(PCM録音)でマスターが作られています。当時は、商品メディアとしてはレコード、一般記録メディアとしてはカセットテープが一般的な時代でした。カセットテープはダイナミックレンジが低いので、マスターが高音質でもダビングしてカセットテープにしてしまうと一気にダイナミックレンジ幅が落ちてしまいます。レコードより音質が劣ります。つまりpppでノイズが気になりfffで歪んでしまうというような。それで少々マニアックだった私はオープンリールテープにもダビングをお願いしました。できるだけマスターに近づけようと。38cm/sec2トラックや19cm/sec2トラックなどです。これだとレコードと同じかそれ以上の音質になります。そんな面倒臭いリクエストにも応じてくれる兄貴のような辻本さんでした。
時代は進み、商品としてのレコードはCDに、さらにデータをネット配信でとなりました。一般録音メディアも、カセットテープからDAT(一般的にはなりませんでした)、MD、メモリ、ネット(データ)となっていきました。CDの時代になったとき、オープンリールテープ記録からCD音質で記録をデジタル化しました。オープンテープに記録された辻本さん録音は、デジタルの時代になって、当時はオープンテープデッキをもつ私くらいしか聞けなかった音質(ダイナミックレンジ)を、CDにすれば誰にも配信できるようになりましたが、これもまだ数少ない対象相手です。ネットとスマホ、YouTubeの時代になったっら一気に誰にでも配信できるようになりました。当時カセットテープコピーだけしか聞けなかったメンバーにも、当時のマスターテープに近い音質で聞いてもらえます。
辻本さん録音は、単に録音状態のよい録音というのではなく、辻本さんの録音技術の高さを併せもった録音です。1970年代、私が聞いた辻本さん録音はカセットテープでした。カセットテープでも、素人が録音した録音と、録音技術のある人が録音した録音の違いはすぐにわかります。そんな辻本さん録音をできるだけ状態よく保存しておきたかったので、オープンリールテープでサブマスターを残していました。デジタルの時代になり、データにすればコピーしても音質劣化することはなくなったので(WAVの場合)、CD音質のWAVデータにして活用しているというわけです。
玉川のメンバーが、吹奏楽の名曲にチャレンジした演奏会は、今でも色あせることのない活動だと思います。それが、辻本さん録音で、デジタルの時代に、当時のカセットテープ以上の状態でスマホで簡単に聞くことができます(スマホのスピーカーよりヘッドフォンがおすすめですが)。どうぞお楽しみください。

(2024年1月北村)

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