デジカメとPhotoshopによるネガフィルムのデータ化
2022.4.15


サンプルに適当な3原色(赤緑青)が入り経年退色のあるネガからのデジタイズ
1981年フジカラー


必要な機材
[1] デジカメ
35mmフィルムの場合、実画面で1200万画素程度確保できれば十分。 センサーが小さいと1ピクセルのデータの質が落ちるのでフォーサーズ、APSC、フルサイズがよい。 6×6版以上は、良質な3600万画素以上が必要です。
[2] 接写リングと解像のよいレンズ
35mmフィルムの接写では、一般的なレンズの最短距離ではたりませんので接写リングが必要になります。 レンズは一般的な標準レンズで十分ですが、解像のよい接写用レンズが適当です。
[3] 三脚(接写スタンド)、シャッターリモコン(レリーズ)
カメラの固定に三脚や接写スタンドが必要です。手でシャッターを押すとぶれるのでシャッターリモコン(レリーズ)も必要です。 セルフタイマーでもよいですが手間がかかります。
[4] トレーサー(光源)
光源としてトレーサーがあると便利です。
[5] フィルム押さえ
フィルムを平面にするためのフィルム押さえが必要です。硬い紙で自作も簡単です。
[6] 水準器
カメラの水平を確認するため(フィルム台も)。
接写はデリケートです。フィルム台とカメラの平行ずれは、ゆがみや部分ピンボケを生みます。
[7] リモコンシャッター、シャッターレリーズ
接写は、スローシャッターとなり、また画角も狭いので少しのぶれが影響します。一眼レフではミラーショックも気になりますからミラーアップ撮影ができればミラーアップ撮影します。
これらが無ければ短いセルフタイマーで代用できます。

接写時のホワイトバランス

カラーネガフィルム接写ではホワイトバランスを電球光など色温度2600Kくらいの低めにします。ネガはベースがオレンジ色なので、自然光(5200K)の設定だと3原色の赤がつぶれてしまいやすくなります。(モノクロネガフィルム、カラーポジフィルムの場合はオートや自然光でよい)
ネガをポジ化するのは、撮影後、画像処理ソフト(Photoshopなど)で、ネガの階調反転後、RGB3原色のバランスとりという手順になりますが、ホワイトバランスを低めにしておくほうが赤のデータが低くなりすぎず都合がよく、RGBそれぞれのヒストグラム配置もバランスよくなり、正しくポジ化しやすいです。




接写時のピント、ISO感度、絞り、露光

(1) ピント
ピントはデジカメのディスプレーで拡大し、フィルム粒子にあわせます。
ディスプレーで拡大できなければファインダー用の拡大マグニファイヤーでもよいです。厳密なピント合わせが必要です。
(2) ISO感度
ISO感度はできるだけノイズの少ないISO100など低感度を使います。
(2) 絞り値
絞りは、F5.6〜F11くらい。
私はF8を使うことが多いです。フィルム中心とフィルム周辺のわずかな距離差や、フィルム面のわずかな高低差への対応のため。
(4) 露光
[1] ポジフィルムの場合
ベストバランスの露光とします。
[2] ネガフィルムの場合
ネガの場合は、ベストバランスよりややアンダー気味のほうへヒストグラムが出るようにします。反転すると逆にややオーバー気味となるようにするためです。 その状態でRGBバランス調整すると、ややアンダーになりバランスしてきます。
接写の場合、ISO感度と、絞り値から最後に露光が決まります。速いシャッターはきれないことが通常です。ですから、しっかり固定したり、リモコンシャッターを使ったりします。
接写リングを使うとオート機能は使えなくなることが多いです。試し撮りして、ヒストグラムや撮影画像をチェックしてよいところを探ります。
フィルムよりデジタルデータのほうがダイナミックレンジが広いので、撮影フィルムの露光誤差はデータ編集時に調整できます。 私は、よい露光状態のフィルムで決定して、撮影中はそのままです。もちろん、一枚一枚調整すればベストです。
私の場合、トレーサーの明るさの限界で ISO200で1/15秒、F8くらいとなります。

階調反転

画像処理ソフトでネガの階調を反転しポジ化します。
私が使っている Photoshop Elements13 では、[フィルター][色調補正][階調反転] というメニューになります。
ネガはオレンジ色ベースですので、ここではまだ正しい色調になりません。上のヒストグラムに示されたように 緑(G)の強い画像になります。RGBのデータは正しく記録されていますが、それぞれの出力バランスがとられていない状態です。

RGB調整

Photoshop Elements13 では、[画質調整][ライティング][レベル補正]というメニューになります。
RGB3原色バランスを調整します。
ヒストグラムにバランスしていないRGB出力をバランスします。 調整作業としては、フィルム撮影データのRGBそれぞれのレンジの「下限〜上限範囲を、デジタル下限〜上限範囲データ範囲に拡張する」というものになります。
手動でRGBバランスする方法と、画像編集ソフトの自動機能を使う2つの方法があります。

(1) 手動で行う

(2) 自動で行う
自動で行う場合は注意点があります。フィルムを複写した場合、撮影画像の外のフィルム自体の画像が入っていると自動調整が期待通り機能しません。 撮影画像以外の部分の入力値も自動処理されるべきデータとして計算処理に加えられるからです。「自動補正」を使う場合は、撮影部分だけにトリミングしてから使います。
また、自動補正後、色合いを調整するには「グレーポイント」を選択し、画像を目で確認しつつ、画像の中間輝度部分を指定クリックし、色合いのよいところで決定します。 手動の場合は、@黒部分指定、A白部分指定、Bグレー部分指定(何か所か試しよいところで決定)、の順でバランスしていきます。

ここまでして終了した画像が下の画像です。
黄色や緑がかぶった画像となっています。これはネガの経年退色によるものです。 退色がなければ、ここまでで良好なポジデータが得られます。
サンプルで示した画像は、退色がありますので、まだ[レベル補正]を終了できません。終了してしまうとRGB出力範囲が決定されてしまい補正しづらくなります。
補正が満足またはほぼ満足な場合は、[レベル補正]を終了します。少々の色補正はこの後でも可能です。 [OK]をクリックして[レベル補正]を終了します。

退色/色かぶり調整

退色がある場合は、ネガの階調を反転したポジの状態で黄色がかぶることが多いです。 また、RGBの自動調整で期待する色バランスが得られず特定の色のかぶりが出ることがあります。
このような場合は色バランスを手動で調整します。経年退色のあるネガからの場合は、ネガから元の色が失われているので元の色を出すことは不可能に近いです。
PhotoShopの場合、「レベル補正」の、「グレーポイント補正」、または「RGBレベル補正」で調整します。

グレーポイント指定で補正
RGB調整の(2)で書いた「グレーポイント補正」を使います。 この処理は、指定色の補色データを画像に加えます。これを使って、色かぶりを弱めます。ただし、正常な色部分では補色データがのってくるので補色の色かぶりが出てきます。 目で見ながらころあいを決定します。
この様子を色相環画像を使ってみてみると右の図のようになります。 色相環画像に彩度の弱い青(点B)を指定すると図の左のようになります。青の補色の黄系の色が加えられます。 また、色相環画像に彩度の弱い黄(点Y)を指定すると図の右のようになります。黄の補色の青の色が加えられます。
彩度や明度の高い部分を指定すると彩度や明度の高い補色が画像に加えられます。この色相環は明度が高いので明度の高い補色が加えられます。 この働きを使って、画像のRGBバランスを微調整し、色かぶりを軽減します。
次にホワイトバランス2600Kで撮った経年退色のあるネガ画像を、@階調反転、Aトリミング、Bレベル補正[自動] とまでした画像を使い「グレーポイント補正」の働きをみてみます。
黄色かぶりを除去したいので、黄色かぶりのある部分に「グレーポイント」を指定します。明度や彩度のある部分は補正量が多くなるので、明度や彩度の少ない部分を指定して様子をみます。 明度のあるCの指定では補色が入りすぎることを示しています。@の明度・彩度の少ない道路部分の指定では、明度・彩度の少ない部分の黄色はとれますが、明度・彩度の大きい部分はとれないので、まだ色かぶりを感じます。Aのガードレールの影部分とBの山肌部分では、Aでは黄色のかぶりを感じ、Bでは青味が出てきます。指定するポイントや画像の色かぶり具合を考えながら妥協点を探します。この例ではAかなと感じます。経年退色は、ネガの色バランスが失われていますので、撮影時の色を再現することは不可能に近いからです。

RGBレベル調整で補正
RGB調整の(1)で書いた「RGBレベル補正」を使います。
退色がある場合は、ネガの階調を反転したポジの状態で黄色がかぶることが多いです。 そこで「青(B)」チャンネルの度合いを上げて黄色かぶりを弱めます。 退色がある場合は3原色のバランスがとれていませんので、青を強くしていくと黄色かぶりは弱まるものの青かぶりがでてきます。 目で見ながらバランスのよいところで[OK]をクリックして終了します。
「青(B)」を強めるには3つの方法があります。
@ 暗い側の青を強める
@をマウスで左方向へドラッグするか、入力レベル(左側)の数値を減らします。
B 明るい側の青を強める
Bをマウスで左方向へドラッグするか、入力レベル(右側)の数値を減らします。
A 青の増量を早める
Aをマウスで左方向でドラッグするか、入力レベル(中央)の数値を増やします。

プレビューの画像を見ながら @,A,B それぞれを試し、満足できる状態をさぐります。サンプル画像では、Bの明るい側の補正が一番効果が大きいです。

カラーバランス調整ができないフィルムの場合、日陰部分や曇天時など色温度が高く「青かぶり」気味のことがあります。この場合はこれと逆に「青」を弱める調整をします。
この補正操作は、「赤」「緑」でも同様に調整できます。

できあがり

以上の調整をして終了した画像です。(少し青が強いですが)
赤いウェア、青いタンク、山の緑という3原色に近い色がすべて入っていて、フィルムの退色があるという、 調整用サンプルに向いた元画像を選びました。


Kenko-Tokina フィルムスキャナ KFS-14WSによるネガのデータ化

ケンコー・トキナーからネガ撮影タイプのフィルムスキャナーが発売されています。 コンデジと同じ1/2.3インチのセンサーでフィルムを撮影するタイプです。画素数は標準で約1200万画素で、 フィルムスキャナーとしては適切な画素数ですが、センサーが小さいのでピクセル等倍データの質は低くなります。 しかし、手軽にネガフィルムをデータ化でき、昔の思い出写真を L版や2L版に印刷するには十分な性能です。色の自動調整もよくできていると感じます。 HDMI出力がありハイビジョン画面で思い出写真を大きく見られるというのも嬉しい機能です。 価格もアマゾンで25,000円くらいと手頃なので紹介記事を追加しました。
退色のあるネガの場合は、自動補正はありませんので、上で説明したような画像処理が必要となります。



退色のあるネガの撮影データ

ネガの退色による黄色かぶりがでています。逆光撮影で被写体の顔が暗くもなっています。
上の説明と同じようにPhotoshopで3原色のレベル調整をし、その後シャドウ部分を明るくしたのが下の画像です。
800×533=42万画素のWEB用データでは一眼レフによる接写との違いはわかりません。約1200万画素のピクセル等倍画像のリンクが以下です。画像で比べてみてください。

Micro-Nikkor 55mm 1:3.5 / Nikon Dfによるネガ接写から画像処理したデータ
KFS-14WSでネガスキャン後退色補正したデータ

こだわらなければKFS-14WSで十分です。デジカメと接写の準備があれば質のよいデータ化が可能です。

参加しているNPOでネガからJPGに変換する作業をこの手順でしたものがあります
https://photos.app.goo.gl/PzxkM5QtXnQvjqFV7


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